変わらない課題

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変わらない課題

「人間のお前には関係が無い、それだけだ!」 「答えになってません!」 「お前に話せば解決するとでも言いたいのか!」 「そうじゃない……だけど!大切な命がたくさんあるこの場所で……命をドブに捨てるような真似をするあなた達の考えに納得がいかない!」 「そう言うお前も結局こうして俺に剣を向けているではないか!」 バーバラムは陽輝を勢いよく突き飛ばした。陽輝は二本の剣を両方とも手放してしまったが、偶然少女の姿になったミリアがエクスブレイズをキャッチしていた。 「ハルキ!」 「ミリア、ありがとう……ミリアはそっちで乱闘してる人たちを止めて!僕はこの人を止めるから!」 「分かったぞ!」 二人はそれぞれこの状況に収集をつけるべく、行動を開始した。 「下らん……お前たちに何ができる?」 二人は再び鍔迫り合いになったが、今度はやや陽輝が押され気味になっていた。 「何がって……僕は戦いを止めたいだけだよ!」 「オイ、ガキぃ!その男は俺らが倒すんだ、邪魔すんじゃねぇ!」 なんと、リザードマンの兵士たちまでもが陽輝に攻撃を仕掛けてきた。 「くっ……なんで……どうして!事情を話す気は無いんですか!」 「……下らん……実にくだらん!〈憤怒暴風撃(グレイブウィンド)〉!」 バーバラムはとうとう怒りが頂点に到達したのか、彼自身が出せる最高威力の技を広範囲に放った。 ―その後、リザードマンの集落 陽輝たちはバーバラムやその場に居合わせた兵士たちからの攻撃を受けて倒れたため、リザードマンの集落に身柄を引き取られることになった。 「……キ……ルキ!ハルキ!」 「ん……ミリア、ここは一体どこなの?」 「もぅ……心配したんだぞ!何とかあいつらを黙らせたと思って一息ついたらすぐ後ろで大っきい竜巻発生してたんだからな!」 ミリアは涙を流しながら陽輝に飛びついてきた。その涙の量や叫び具合からよっぽど心配していたことが分かった。 「わ、悪かったな……少年。まさか君が私達の争いを止めようとこの地に来ていたなど知らずに攻撃してしまって……」 青い鱗が目を引くリザードマンがミリアたちのいた小屋の中に入ってきた。 「私はカルノー、リザードマン革新派の副リーダーを務める者だ。君たちは一体誰なんだ?」 「僕はハルキって言います、それから……」 「ミリアだぞー!こう見えて実は魔剣なんだ!」 「そうか……やはり君たちはこの世界を救った〈英雄〉と何か深い関係があるのかもしれないな」 カルノーは静かに微笑みながら、小屋の本棚から薄っすらと埃を被った古びた本を取り出した。 「カルノーさん、この本は一体何ですか?」 「これはかつて世界をたった一人で救ったとされる〈英雄〉様の活躍と伝承を記した書物だ。私が幼かった頃から今に至るまでずっと残っていてね……その中に君たちのような者に関する節があったんだ」 そう言うとカルノーはその〈英雄〉と陽輝たちの似ている部分を本の記述通りに話し始めた。 その内容とは〈世界に魔があるとき、二振りの神剣解き放たれん。解き放たれし神剣、英雄の手に渡る時、世界の魔は退けられ、光戻る〉というものだった。 「本当に凄い人だったんですね、〈英雄〉って呼ばれてる人は」 「あぁ……彼は誰もが憧れた存在だったが、ある時を境にこの世界からいなくなってしまったようでね。私はそれ以来、彼のような存在がこの地に来ることを待つことにしていたんだよ」 (リザードマンの人たちの中にもこんなにいい人たちがいるんだね……) 「なら、どうしてあんなことを?」 陽輝がカルノーに対してこう質問すると、彼は少しだけ顔を難しくしてしばらく黙り込んでこう答えた。 「私たちリザードマンは他の種族よりも生活が苦しく、貧民キャンプなんて死体の腐った匂いがものすごく漂ってたりするから、それで領地を広くして私たちが不自由なく暮らせるようにしたくてね」 (そっか……いくらここがゲームの中の世界だからって、この人たちからすれば現実なわけだから、生存競争とか領土問題は避けられないよね) 「だからって争っていいだなんて考えがおかしいよ!」 陽輝よりも先にミリアが口を開いた。 「分かっているんだ……話し合ったって解決できることだということは。だが……私の同士たちがこの混乱に乗じて他の種族の領地をも奪おうなどと言い出したのが、この争乱の一番の原因だ」 「……カルノーさん、それはあなたにも非がありますよ。いくら立場が副リーダーだからって、指示を出したらダメなんて決まりはどこにもないんですよ!」 陽輝から湧き出してきた答えに思わず下さいカルノーは、何も言い返せず、ただ小さく拳を握った。 「僕らも手伝いますから……どうにかこの争乱を終わらせましょうよ!」 「そうだな、それが先決だ……」
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