第1話「クラス替え」

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「1-Eに戻りたい…」 中学生になって二度目の春。【上田(うえだ) 悠斗(ゆうと)】は「2-A」の教室で1人ため息をついた。 毎朝袖を通す制服にも、昼食は弁当な事にも、放課後に部活があって夕方のアニメが見られなくなった事にもすっかり慣れた。しかし残念ながら「すっかり慣れた中学生ライフ」はたった今、終わりを迎えたようだ。どんなに生活リズムに慣れようが、その生活の基盤になる「クラス」が変わってしまったのだ。 遡ること2時間前、始業式の前に新2年生は昨年まで使用していた1年生の教室に集められた。悠斗のクラス「1-E」の教壇の上には合唱コンクールで入賞した時のトロフィーが置かれ、皆写真を撮ったり思い出を語らっていた。 『1-E最高!』『1-E永久不滅!』 大人は非常だ。 1年間を通して固く結ばれた絆を『クラス替え』という制度で生徒側の意思と無関係にバラバラにほどいていく。新しいクラスでまた1から絆を築いていかなくてはならない事に悠斗は辟易とした。「せめて仲良しの奴らと同じクラスになれたら…」悠斗は1人願いを込めた。 そして、そこから2時間後の現在、悠斗は新しいクラス「2-A 」で1人ため息をついている。願いも虚しく、誰1人仲良しの奴らと一緒のクラスになれなかった。女子とは数人同じクラスになったが、元々女子との関わりが薄かったのであまり意味がない。肝心の男子はというと、これもまた関わりが薄い【小野(おの)拓哉(たくや)】だけが同じクラス。1-Eには男子が18人も居たのに、なぜ2-Aには自分と小野の2人しか選ばれなかったのか。悠斗は神を、いやクラスを決めた先生達を呪った。 しかし、このクラス替えが、小野 拓哉が、悠斗の新しい中学生ライフを彩る事になる。 それに気づくのはもう少し、先のお話ーー。
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