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悠斗のゴールデンウィークは想像していた通り、家族と少し出掛けて終わった。昔はショッピングモールに行くだけで大はしゃぎしたものだが、中2にもなるといちいち家族総出で買い物をする事に面倒臭さを感じる。なので、連休最終日は学校に行けることが楽しみになっていた。
『クラス替えしたばっかりの時はあんなに学校へ行くのがイヤだったのになぁ…』
学校の準備をしながら、悠斗は1人苦笑した。楽しみになったのは、井上や同じ班の皆はもちろん、やっぱり拓哉のおかげである。
連休中、拓哉との小競り合いがなくなった事で彼とのやり取りが楽しみになっていた事に気付いた。だからこそ、彼の事を名前で呼べるようになりたい。そのために何かきっかけが欲しい。けど、どうやってそのきっかけを作ったら良いのか分からない。
楽しみと不安を抱え、悠斗のゴールデンウィークは終了した。
虹ヶ丘中学校では、ゴールデンウィークが明けると同時に、5月後半に開催される体育祭の練習が始まる。連休明けの初日、早速その準備と練習が始まった。
「それじゃあ、各競技の出場者を決めます。
自分が出たい競技に手を挙げて下さい」
1時間目、学級委員である青山の司会で【出場種目決め】が行われた。必ず1人1つは何かしらの競技に出場することになっている。
運動が得意でない悠斗は、純粋な走りを必要としない競技を狙っていた。
『800mリレーはパス。ハードル走もイヤだなぁ。障害物競走か、借り物競走か、二人三脚か…。障害物と借り物は競争率高いから確実にいくならここは…』
悠斗は思案を巡らす。運動が苦手な人間にとって体育祭の競争選びは重要だ。ジャンケンに負けてリレー選手にでもなったら最後、本番までを絶望的な気持ちで過ごすことになる。なので競争率が低く、運動苦手でも何とかなりそうな【二人三脚】に手を挙げる事にした。一緒に組む相手が分からないリスクはあるが、まぁ何とかなるだろう。
「じゃあ、次。二人三脚に出たい人!」
「はい!」
悠斗はサッと手を挙げた。
「えーっと、上田君…と」
青山が黒板に書かれた【二人三脚】の文字の隣に悠斗の名字を書いた。決定だ。後は一緒に走る相手が見つかるまで待つだけだ。とりあえず、ホッとした。
「他に二人三脚に出たい人はいますか?」
「あ!オレも出る!!」
悠斗の後ろの方から声がした。1つ後ろの江口ではなく、その隣にいる女子でもない。
声の主は2つ後ろに座っている拓哉だ。
『えっ!?マジ!?』
まさか拓哉が手を挙げると思っていなかったので、悠斗はビックリした。
「はい、小野君…と。他にいますか?…じゃあこの2人は決定で他の競技に移ります。次は…」
拓哉と一緒に走る事になった。嬉しい。またおデコの事でからかわれるんだろうが、やっぱり嬉しい。その後、種目決めが終わるまで悠斗はずっと前を向いていた。拓哉に喜んでいる顔を見られたくなかったのだ。
「悠斗ー!よろしくな!」
種目決めの後、悠斗の元へ拓哉がやって来た。
「よろしく!まさか一緒に走ることになるなんて思わなかったよ…」
「そりゃあ走ってる間はお前のおデコ拝み放題じゃん!」
「…え?それが理由で二人三脚に手を挙げたの??」
「いや~楽しみだな~」
「…じゃあ、そっちは本番までにもう少し痩せておいてね!一緒に走り辛いから!!」
「は!隣に輝くデコデコがある方が走り辛いわ!」
「トントンよりはマシだろー!」
結局いつもの小競り合いとなってしまった。
拓哉と二人三脚で走ることになり、嬉しさと心配で一杯の気持ちを抱えたまま、悠斗は体操着に着替えグラウンドへと向かった。いよいよ、体育祭の練習が始まる。
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