第1話「クラス替え」

5/7

143人が本棚に入れています
本棚に追加
/158ページ
悠斗の2-A初日は怒濤のように過ぎていく。 『学級開き』に始まり、今後の生活の話を濱田先生より受けた後、1人1人の『自己紹介』となった。出席番号順にスタートしたので、話す内容がまとまる前に悠斗の出番がやってきた。 「上田 悠斗です。去年はE組でした。部活は美術部です。このクラスにはあまり知り合いがいないので、早く皆と仲良くなりたいと思います。よろしくお願いします」 結局インパクトのない、当たり障りのない事だけを話して終わってしまった。 『もっと出席番号が後ろだったら考える時間もあったのになぁ…』と思ったが、だからといって面白い話ができるわけでもない。 「えー、小野 拓哉です!去年はE組でした!部活はサッカー部で皆からは【拓哉】って呼ばれています!」 「よっ!トントン!!」 サッカー部の連中から茶々が飛ぶ。 「トントン言うな!」 「トントン!?」「何でトントンなのー?」 ここまでテンプレート的な自己紹介が続いていたので、流れを変える人物の登場に教室中がざわつく。 「体型がさー、トントンって感じじゃね?」 高野が言うと皆笑いながら納得した。 「高野~!」 拓哉が困った様な声を上げた。 男子は面白がり、女子からは「かわいー!」と声が飛ぶ。 『ここでもムードメーカーだなぁ』と悠斗は思った。 男子の自己紹介が終わると次は女子の番だ。 2-Aは女子の方が少しだけ人数が多い。それだけでも女子の方が強く感じるのだが、その中でもとりわけ存在感を示したのは井上だった。 「井上 綾香です!女子バスケ部と生徒会に入ってます!あ、去年もA組でした!みんなよろしくー!」 「井上ー!海苔見えてんぞー!」 ここでも樋口の野次が飛ぶ。 「あー、かわいい眉毛でごめんねー!」 お茶目な表情でひらりとかわす井上に拍手が起こる。 流石生徒会をやっているだけあって肝が座っている。なるほど【おデコに貼った海苔】とは彼女の眉毛の事だった。確かに前髪から透けて見える眉毛は濃い。健康的な彼女には合っていると思うが、やはり女子としては気になる所なのだろう。 こうして2年A組、全員の自己紹介が終了。再び濱田先生の話に戻る。緊張しているのもあるが、配布物の確認、春休みの課題の提出などアレコレしているとあっという間に時間が経ち、昼食の時間となった。 昼食は班で食べる決まりとなっている。悠斗と同じ班になった男子陣は皆穏やかだったので安心した。一方で女子は井上を含めとても元気で、悠斗は終始圧倒されっぱなしだった。
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

143人が本棚に入れています
本棚に追加