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夏 ~実らない花~
放課後の日差しの中、彼女が朝顔に水をあげている。
彼女の髪は風に揺れ、朝顔の根元は水に揺れている。
私はいつもその光景を、すこし離れて見ている。
「璃々子。この中でどれが実らない花かなんてわかる? 実らない花に価値がないなんて考え、私は信じられないな」
だってどの花も綺麗だよと。
青い朝顔を前に、愛しい彼女がほほえんだ。
「実らない」が示すのは子孫なのか、私の初恋なのか。
望むだけ無駄かもしれないけれど、子孫であってほしい。
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