プロローグ

1/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

プロローグ

「リンナ姫様。姫である貴方はおとなしく守られていてください」  家臣の忠告に、私はブチ切れた。  年老いた家臣イライジャのありがたい忠告はこうだった。 「リンナ姫様、貴方様はか弱き女性なのです。いくら勉学や武術を学ばれたからといって、男性には劣ります。どうか他国の王子とご結婚なさって、政治は王子に任せ、姫様は元気な世継ぎを産むことにお力を尽くしてくだされ」  はぁ!? なんですって?  ぐっとそう言い出したいのを堪え、私はにっこりと大人の女性らしく微笑んだ。 「確かに、武術では男性には劣るかもしれません。私が学んだのは、いざという時のための護身用ですから。しかし、勉学については他の男性に引けを取らないかと思います。私はこの国一番と名高いヴィルバ王立大学に実力で入学しておりますし、一般教養意外にも、帝王学、魔法なども学んでおります」 「その魔法がいかんのです」 「はて……、どういう意味でしょう」  イライジャはもったいぶって咳払いをした。 「リンナ姫様は、その魔法をエルフから教わっているとか……。我が国では、魔族が軽蔑されているのをご存知のはずです」 「イライジャ、魔族の迫害は法律で禁止されています」 「しかし……」  家臣イライジャは、もじもじと手を揉んだ。その姿は、悪戯を咎められた子供というよりは、言うことを聞かないわからずや相手に気を揉んでいるようだった。  私は先を促すように相手の言葉を待った。彼は一向に口を開かず、手を揉んでいる。  ああ、そう。察してくれって、いい年こいて中身は思春期なのね。 「魔族への迫害が法律で禁止されているからといって、我が国では依然として差別的な扱いを受けておりますものね。魔法を使う者は野蛮で下品だなんて……。私達女性も同じような扱いを受けておりますものね」  イライジャの耳まで真っ赤になった。  嫌んなっちゃう。ハラスメントを受けているのは私なのに、これじゃあ私が家臣にパワハラしているみたいじゃない。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!