プロローグ

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「はっはっはっ、リンナ、その辺にしてあげなさい」 「お父様っ……!」  私の父であり、現国王のゴーウェンが部屋に入ってきた。 「いやはや、書類に印鑑を押すだけの仕事だが、肩が凝るな。大臣達も早口で難しい言葉を並べ立てるから追いつけやしない。わしも年を取った」  そう、お父様も年を取った。次期後継者を決めなければならない程に。私には兄弟がいなかった。私の母は私を生んですぐに亡くなってしまったから。  父は母だけ愛し、他の女性と結婚をしなかった。父には息子がいない。  だから、私が王位継承すると言っているのに……。 「ちょうど良いところへ来てくださいました、国王陛下。リンナ姫が私めの言うことを聞いてくださらないのです」 「はっはっ、姫はわしの言うことも聞いてくれやしないぞ」 「笑い事ではありません……!」  老人二人が談笑しているのを横目に、私は盛大にため息を吐いた。こうして王室内でのんきにくっちゃべっている間にも、王宮の外では迫害を受けている民達がいるのだ。  困っている民を放っておくなんてできない。 「お父様、それで何の御用でしょう」  わざわざ忙しい仕事の合間を縫って、娘の部屋まで来たのだ。何かしらの用があるはず。 「おお、そうじゃった。リンナ、わしは大臣から渡された書類に印を押していたんじゃがな、その書類の中にお前の見合い話が混じっておったのじゃ」 「見合い話!?」  オオマイゴッド!!! なんてものに印を押してくれちゃっているんだ。私は結婚なんてしないって言ってるのに! 「他国の王子ではないんじゃが、リンナの従兄弟のほら……あの、なんて言ったかのう……」 「ダリス」  ああ、もう。お父様ったらボケてきちゃってる。私より2歳上のダリス(にぃ)は、小さい頃私とよく遊んでいたのに……。 「そうじゃった、ダリスじゃ。他国の王子にも見合い話を持ちかけたそうじゃが、あいにく年頃のがいなかったようでな。従兄弟のダリスならお前と年が近いし、顔馴染みじゃろうて」  年頃のがいなかったというより、私の評判のせいだろう。 「じゃから、見合いを……」 「お断りします! この国を継ぐのは私。結婚なんて絶対にしないんだからっ!」  腰を抜かしている老人2人を置いて、私は部屋を飛び出した。
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