不毛な恋を謳歌するのは

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最近なんで千世くんの方の更新がなかったかって、性癖に負けたからなんですよ。 ※作品説明必読 藤堂貴弘(生徒会会長) 八重島司(生徒会副会長) 綾瀬光希(生徒会会計) 小鳥遊努(生徒会書記) 矢崎空(庶務兄) 矢崎陸(庶務弟) 不毛な恋をしている。その自覚はずっと昔からあった。 初恋は年の離れた従兄だった。たまにある在宅仕事で、会社から持ち帰ったノートパソコンを真剣に見つめるその目が。眼鏡の隙間から見える切れ長の目が、とにかく美しいと感じて。 ただ、その恋の始まりは同時に恋の終わりを告げていた。だって彼には既に婚約者が居たし、第一男同士だ。 二度目の恋は芸能人の集まるパーティーに父に連れていかれた時だった。その頃はその人がアイドルとしてデビューしたばかりで、クール系イケメンの期待の新人と世間では騒がれていた。イケメンなのは確かだが、イケメンと形容するより美人寄りの、それでいて男らしさのある容姿をした人だった。そしてこの恋で自分の趣向のタイプを理解し、今後恐らく恋が叶うことはないであろうことに気づいた。 のに。 「彼は初対面にも関わらず私の本心に気づき、それでいて素の私で接してほしいとおっしゃったのです!彼こそ私の運命!」 などとのたまうコイツを俺はどう窘めればいい。学園に入ってから、特殊な環境下であれば同性愛は認められるものであるということを知った。小学校からエスカレーター式に上がってきた女子禁制の男子校。思春期に入って性欲が増してきた同級生からは同性愛者や、普通の恋愛に諦めを感じる者が増えてきた。それは目の前のコイツも例外じゃない。 だが、ここまで高揚感を表に見せるほど恋愛に熱心ではなかったはずだ。人当たりは良いが、個人に対してほとんどの感情を示すことがない。清廉に保たれるその美しさは氷のように冷たく、親衛隊のメンバーからは白雪と呼ばれ慕われている。そんな人間がどうして、たった数分転校生と会話をしただけでこうなるのだろうか。 「あ"ー・・・。」 「どうしたんです?仕事終わりの中年のような声を出して。」 「どうしてその概念を知っている?じゃない。その、なんだ、惚れたのか?」 「はい。」 「お前が素直なのも気持ち悪い・・・。」 「捻り潰しますよ。さっきからなんなんです?」 「いや、お前が恋をしたというのがあまりにも衝撃的でな。」 「それを言うなら、私は貴方が恋をする方が想像出来ませんがね。許嫁も居ないようですし?」 ・・・好きな奴が居るからと言ったら引かれるやつか?これは。俺だって不毛な恋以外ができるなら存分にしたいところだ。普通に女性が愛せたなら、そうでなくとも俺を、俺の感情を受け入れてくれる相手と恋愛ができたならと、そんなことはいくらでも考えたとも。 まさか、学園に入ってからの最初の恋、人生で数えると三度目の恋が、家的にも学園での立場的にも、相性が最悪な風紀委員長だなんてな。 「くれぐれも問題は起こしてくれるなよ。」 「また、風紀に首を突っ込ませるなと言いたいのですか?」 「その通りだが?」 「貴方それだけは譲りませんよね・・・。どれだけ風紀委員長のことが嫌いなんだか。」 その逆だから困っているんだ。この感情は悟らせてはいけないものなのに、生徒の秘密事に深く関わることも多いからかアイツはやけに察しがいい。だからなるだけ接触は避けたい。 生徒会の役員が問題行動を起こせば、それを統括する立場にある俺が、嫌でもアイツと話さなくてはいけないことになる。 正直に言ってそれは、接触を避けるという目的もそうだが、俺のプライドとか、アイツの俺に対する評価だとか、色々なことに関して不都合だ。 アイツは人以上にできるから、努力してやっとここにいる俺の無能さを知られたくない。誰だって、好きなやつの前ではいい顔をしていたいだろう。 「でも気になるなぁ。司が惚れるなんて相当だよね。」 「光希・・・まさかお前・・・。」 「勿論お昼の時にでも見に行くよ☆」 「「光希が行くなら僕達も行くー!」」 「便乗するな双子。一人が食堂に行くだけでも騒ぎになるのに集まったら何があるか分からないだろ。認めないからな。」 「じゃあ貴弘はお留守番ね!努は一緒に行こうね~!」 「うん・・・・・・。」 「なっ、私も行きますからね!」 俺以外の全員が食堂に?俺が居ない間に生徒会メンバーが問題を起こせば俺の監督不行届・・・。かといって俺も食堂に行けば仲良く問題児の仲間入りだ。なんとかして止めたいが・・・コイツらの好奇心は俺一人が止められるようなものでもないからな。いつもなら司がストッパーになってくれるが今日はこの始末だ。腹を括るしかない。 「俺も食堂に行くぞ。」 「えー?なになに?」 「やっぱり会長も気になるんだ?」 「ち・が・う。俺はお前らが問題を起こさないように見ているだけだ。」
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