3 ズルい俺

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「あ、嘘……」  脚を大きく開いた状態で、自分のついさっき吐き出したものをローション代わりにされ、身体の一番奥を同じ男に指で抉じ開けられている。そんな今の状況には、確かにその言葉が一番しっくりくる。  俺だって信じられないよ。まさか男相手に、こんなに興奮するなんて。そしてそんな場所に指を挿れることに、少しも嫌悪感を抱かないなんて。 「痛い?」 「あ、わか、ないっあ、あ、あ、すごいっ」  シーツをぎゅっと握り締めて、目尻に涙を浮かべながら、中を掻き混ぜられる感覚に声を上げている。 「二本……挿いったよ……」 「あ、ンっ! あっ」  アルコールの力ってすごいな。お互い初めて同士なのに、あきらかに林原先生は感じていた。気持ち良さそうな声が指の動きに合わせて聞こえてくる。そして男同士だからこそ一目瞭然でわかる。先走りすら滲ませて、しっかりと勃ち上がった状態のままで、フルフルと震えているそれを見れば、どのくらい興奮しているのか、まるわかりだ。  さっき掌でイったばかりなのに、その先端から滲んで、自分の腹の下へと垂れて、小さく水溜りを作っている。 「あ、ン、ダメ、あ、あ、あ」  声、すごい興奮する。本人はそんなこと思えないんだろうけど、その声のせいで余計にこっちは切羽詰まって、止めてあげられなくなってしまう。 「あ、あぁぁっ!」  そんなに動いてもいないのに、額に汗をかくくらいに身体が熱くなってきていた。  指で中を解すように動かしながら、さっき舌で転がすと甘い声を上げた乳首を指でまた摘んでみた。その瞬間、背中が撓って、腰を浮かせている。まるで俺の指を咥え込んだそこを、俺に見せ付けるみたいにしながら、ビクビクと跳ねている。 「あ、ダメ……あ、ゥ」  テラテラと腹を濡らして、あられもない声を上げながら、引き締まっている細い腰を浮かせて、感じているのはその様子だけでもわかるけれど、それよりも指を咥えた体内が、一番雄弁にその快感を伝えてくれた。  キュッ締め付けて、狭いのに、ぬかるんでいるそこに、息が上がる。自分の欲望がのたうちまわって、その孔を欲しがるみたいに、思考をぼやけさせてしまう。 「あ、やぁぁっ! 乳首ダメっ! って、あ、あ」  締め付けが強くなって、身体を震わせ始めたのを見て、もう限界だった。  ずるっと指を引き抜くと、苦しそうな甘い声は切ない吐息に変わった。 「あっ! 嘘……」  全裸で大きく脚を広げていた林原先生は、まだシャツもズボンも身に着けたままだった俺が、ベルトを外して、前を寛げて出したそこを見て、目を丸くした。  さっきと同じ言葉だけど、その声色はさっきよりも色っぽい。 「挿れるよ……」 「え? あ、あ、ぁ……嘘っ! あ、ダメって」  ヒク付くそこに、林原先生と同じように先端が濡れた自身のを押し付けて、愛撫するように入口を撫でると、驚いていた声がすぐに色気を増してくれた。 「あ、ダメっ! ダメってっあ、あぁぁっ!」  男のそんなものがそんな場所に、そう思って慌てているけれど、俺は止めてあげられなかった。ぎゅっと力を込めて拒絶してくると思った体内は、やわらかくきつくしゃぶり付いて、入り口の締め付けとは違う感触で、やらしいくらいに狭く熱い。 「あ、焼ける! 熱いって」  俺も熱い。身体の中心をお互いにものすごい熱さの中で繋げて、そこと脳みそが直結しているみたいに、熱で溶けそうになる。  ズッと静かにゆっくりと身体を収めていくと、動いてもいないのにものすごい快感だった。 「っ!」 「ひゃああっ!」  動いていない。ただあまりにも熱くてやらしい孔の中だったせいで、全部を収めた瞬間、身体がブルッと震えてしまった。そしてその震えを直に体内で感じたせいで、甘い嬌声を上げている。ここで上がった声が悲鳴に近ければ、俺も止められたかもしれない。でも明らかに声には快感が混ざっていた。  それを確かめて、ゆっくりと動かすと、自分でも戸惑いながら、でも確かに腰をくねらせて、彼は彼なりに快楽を追いかけている。  唇から零れる喘ぎ声は乳首を愛撫した時よりも、掌でイかせた時よりも、指で体内を掻き混ぜていた時よりも甘ったるい。 「痛みはある?」 「あ、いやぁ……ン、な、い……ダメ」  痛みがないからこそダメ、そう言っているみたいだった。男同士でこんなふうに気持ちが良くて、油断していたら意識が飛びそうなほどだなんて、知らないほうが良い事だ。  そう俺も今は思うけれど、もう手遅れだ。  すごく気持ちが良くて、すごく夢中になってしまう。ズチュッとやらしい音が聞こえる、そこを凝視してみても、嫌悪どころか、視覚的にも刺激されて、興奮が増すだけだった。 「あ、んんっ大きいっ!」 「ごめん……でも」  でも中を更に大きく張り詰めたもので掻き混ぜられて、そんな気持ち良さそうな顔をされたら、止めてあげられない。 「あ、どうしよ、これ、ヤバ」  勝手にうねって、体内を俺に擦り付けている自分に困惑している。 「すごく気持ちイイ……林原先生は?」 「あ……ン」  返事よりも先に喘ぎ声を上げてしまって、本人は一瞬驚いたけれど、俺の顔をじっと見つめて、まるで観念したように目を閉じた。 「すごく、気持ちイイ……あ、やぁぁぁあっ!」  俺はズルいんだろうな。キスでさえ蕩けていたこの人が、今、こんな甘い声を上げて、こんな場所を女みたいに濡らしながら、腰を振っていたら、気持ち良くないわけがない。刺激にきっと敏感なんだろう。キスマークが簡単に残ってしまう肌は、愛撫の度に赤い模様を全て身体に浮き上がらせている。そんな人を突き上げて、揺さ振りながら、「気持ちイイか」なんて尋ねたら、そりゃ頷くよ。 「あ、あ、あ、ダメっそこ、したら」 「またイく?」 「あ、あ、あゥっ!」  腰を思いっ切り捻じ込んで、林原先生が仰け反るくらいに快感に溺れていく。 「ね、林原先生」 「あ、ひゃあ……」  シーツに必死にしがみ付いていた手を取って、その中指をしゃぶった。 「どっちを気持ち良くして欲しい? 乳首? それとも……こっち?」 「あっ……」  顔を真っ赤にして口をパクパクとさせて、答えを言うかどうしようか迷っている。コリコリに女のものよりもやらしく尖っている乳首か、それとももう今すぐにでも達してしまいそうなくらいに張り詰めた屹立か……どっちかを、ズルい俺は彼に選ばせた。 「いいよ、林原先生がどっちか自分でして? そしたら俺がそっちじゃないほうを気持ち良くさせてあげる」 「……あの」 「ほら、この手で好きなほうを弄って?」  そして唇でしゃぶっていた手を開放すると、おずおずと林原先生が自分の股間へと手を伸ばした。俺はそれを確認して、ニッコリ笑うと、コリコリと尖った乳首を指で摘んで、そのまま捏ねるように押し潰して、同時に繋がった場所を何度も奥深くまで突き上げていた。
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