おまけ話 君の好物

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 甘くて聞いているだけで蕩けるような郁登の喘ぎ声。  それが突き上げられる衝撃と一緒に耳を愛撫するのが気持ち良くて、自分の下で腰をくねらせる姿をついうっとりと眺めてしまう。 「やァっ! なっに、あっ! あ、ァ」  見惚れていただけ。君に夢中なだけ。そう言う自分の声に郁登の喘ぎが邪魔されるのさえ、惜しくて、無言で笑顔だけを返した。きっとそれだけでも郁登には伝わった。  ほら、身体が衝撃でズリ上がりそうなほど腰を打ちつけられながら、郁登はちゃんと頬を染めて照れている。 「っ、締め付け、気持ちイイ」  キュウっとしゃぶりついて、身体が素直に反応してくれる。  郁登の全てに魅了されて、このまま繋がった熱で自分が溶けそう。 「あっン、奥がっ」 「ここ、好き?」 「んん、好き、ィ……すごく、健人」  グリグリと先端で押し潰すように刺激されるのが好きなのか、それとも俺を好きってことのなのか、答えは喘ぎでわからない。キスで、ぽってりと美味そうなゼリーのようになった唇は、その後の言葉を続けてくれない。 「あ、もっと、もっと奥、きて……健人の、欲しい」  代わりに溢れるおねだりの言葉に、勝手に自分の中で暴れる熱が反応した。郁登の一番奥を何度も掻き混ぜられるように、グンと硬さも張りも増した屹立に、郁登が感極まったように啼いている。俺の下で妖艶に踊るように、自分からもイイところに擦り付けて、貫かれる場所をもっと深くへと誘い始めた。 「ん、郁登、蕩けそう」  よがる腰を両手で捕まえて、引き締まった肉へと貪欲に何度も何度も押し付ける。 「あ、あァ……ダメ、またイっちゃう」 「俺も」 「健人、お願い」  潤んだ瞳が切なげにこっちを見つめていた。こんなに色っぽくて、同性をゾクゾクさせるくせに、この前、誰よりも元気にグラウンドを走り回っていた。 「乳首、Tシャツ、邪魔、健人の舌」  汗でしっとりと濡れた肌。でも学校ではキラキラと太陽に反射さえしそうなほど、爽やかで眩しいくらいの笑顔を振り撒くんだ。 「俺の舌が、何?」  質問しながら、ズルズルッとギリギリまで引いて、そしてやらしく粘膜が擦れ合う音を響かせながら、根元まで一気に押し込んで、熱い肉を貫いた。その瞬間に背中を逸らして、大胆に開いた脚を抱えて、甲高く甘い声を上げる。 「や、ァ……も、イっちゃう……だから、乳首、舐めて」 「ここ?」  唾液で濡れてピンクよりも濃い色をした乳首を摘んで、クリクリといじってあげる。 「あァァっン! や、それじゃなくて、舌で舐めて欲しっあああっ!」  誰も知らない、こんなにエロい郁登。 「あ、あァァっ! ダメ、ィくっ! んん」  舌で押し潰しても、コリコリになってすっかり卑猥な形に変わってしまった乳首は、もっと強くってねだるように、たっている。こんなエロい反応をするようになったら、本当に水泳部顧問を考え直してもらわないといけない。女なんて目じゃない。やらしい乳首を舌で、唇で、そして指でいじりながら、腰は狂おしく中を何度も抉っていた。 「あっ健人、もっ」 「郁登っ」 「ァ、ァ、ァ、イくっ…………っ!」  声にならないほど感極まった郁登がビクビクと跳ねて、捲り上げられたTシャツをもっと卑猥に白で濡らす。しゃぶられて、飲み込むように吸い付かれて、身体がブルッと震えた。 「あ、熱い……ん、気持ちイイ」  中で感じる熱にうっとりとしながら、肉襞をせわしなく収縮させている郁登。やらしくてむせかえるほどの色気を垂れ流す姿を自分の下で見つめながら、最後の一滴まで注ぎ込もうと、数度腰を震わせた。  荒い息、呼吸がすぐには整わないほど、激しさをキッチンっていう団欒の場所で堪能する。 「好きだよ、郁登」 「ん、ァ……ン」  濡れたそこをもう一度、ゆっくりと舐めるように堪能してから、名残惜しいけれど、腰を引いた。ズルッと抜ける瞬間の切なげな表情。それとトロリと先端で掻き出される白い熱。 「美味しかった?」  俺のソーセージ、そう囁いたら、頬を真っ赤にして、乳首をビンビンにさせながら「バカ、変態」って怒っていた。 「おっ! 今日は焼そばですか?」  ひょこっと顔を出した大嶋先生は、郁登のランチをチェックして、ただの焼そばを羨望の眼差しで見つめている。  キャベツをふんだんに入れた焼そばは余ってしまって、それが郁登の昼飯になった。もちろんおかずだから、おにぎりを二個追加されている。  そして俺はいたって普通のコンビニ弁当。毎回手作り弁当を持っていると、席が隣同士だし、見比べた時に何か勘付かれてしまうかもしれない。大嶋先生なら大丈夫だろうけど、問題は女の勘っていう恐ろしい武器を持っている及川先生だ。 「いいなぁ、美味そう。あ、金沢先生は俺と同じ、しがないコンビニ組っすね」 「美味いですよ? 中華丼」 「ウズラの卵ください」 「ダメです」  どうしてど真ん中にある、この具沢山の中で唯一の存在であるウズラの卵を、大嶋先生にあげると思うんだろう。即答で拒否されて、がっくりと肩を落とした。 「だって、林原先生の焼そば、ソーセージ入りっすよ! 羨ましい! 俺もソーセージ食いたい!」 「ブッ!」  お茶を見事に吹き出したのは郁登だ。 「だ、大丈夫っすか? 林原先生」  大嶋先生もびっくりだ。  ソーセージ、郁登の好物だからと、大入りで購入したそれは今日のお弁当にもふんだんに入っている。 「林原先生も、ソーセージ大好きなんですよね」 「!」  郁登、顔真っ赤すぎ。それじゃ怪しまれるよ? 「へぇ、ソーセージ仲間っすね」 「昨日も食べたって言ってましたよ? ソーセージ、たくさん」 「!」  ソーセージ仲間ってどんな仲間だよ。大嶋先生は俺が隠語として『ソーセージ』を言っているとも知らず、素直にその言葉を俺の後に続いて連呼している。そしてどんどんと真っ赤になる郁登。きっと内心ではからかわれて怒っているんだろう。  そんな反応すら俺を夢中にさせる郁登が悪いんだよ。 「食べましたよっ! たっくさん!」  ヤケクソで答えた郁登は、その後、お子様ランチのタコさんウインナーを家庭科の調理実習で笑えるくらいに差し入れされていた。
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