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食べるので無ければ、釣らないほうがいい。
釣った魚を池に放すなら、渓流にもどすほうがいい。
釣った魚を池に放すのは、カゴの中に小鳥を閉じこめておくのと同じだ。
山野の草木を鉢植えにして盆栽や植木鉢の花を見るのと同じだ。
そんな思いが、家へ歩くぼくの中に湧きあがっていた。
やっぱり、ぼくは魚を釣ることより、釣りというものに興味を持ったのを実感した。どうやって魚を騙して餌や毛鉤に食いつかせるかで、釣れる、釣れないが決る。
そして、渓流のどこに、どんな魚が棲んでいるかだ。そのことを知らないまま釣りをしても魚は釣れない。
父はぼくの思っていることを理解していたのか、その後、ぼくに、釣りに行こう、とはいわなかった。
(ある次郎の物語② 毛鉤 了)
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