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そんなことを考えながら、渓流の石のまわりの淀みへ毛鉤を飛ばす。釣れるのはウグイだ。こうなるとなおさらタタキ釣りに興味を無くす。興味が無くなったのはウグイのタタキ釣りだ。他の魚を釣るにはどうすればいいだろう。ぼくは釣りをやめて岸の大きな石の上に竿を置き、父が釣った魚を見にいった。
父は岸辺を移動せずに、いつもの浅瀬で竿を振り、身体の向きだけを変えて、毛鉤を飛ばす方向を少しずつ変えている。
「どうした?」
「何が釣れたか見に来た」
岸辺に置いてある、釣った魚がはいった父のポリ袋を見た。ウグイばかりだ。
「ウグイだけだ。水温が高いとオイカワが釣れるんだが、今日は釣れない。
ヤマメやイワナが釣れるのは、もっと水温が下がってからだ・・・。
いつもなら、ヤマメやイワナが好む水温まで下がらなくても、ニジマスが動きまわるんだが、今年はいないみたいだ・・・。
そろそろ、帰るか・・・」
父はぼくと同じように他の魚を釣ることを考えている。水温の下がる時期が遅れているといいたいらしかった。
「うん」
ぼくは今までいた岸辺へもどり、竿に釣糸を絡げて、ウグイが入っているポリ袋を持った。
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