第2章 欲しかった答え

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「そ、それでっ……もしよかったら、おれとつきあってくれないかな?」  わたしは驚いて顔を上げる。 「あ……え?」 「だめ……かな?」  どうしよう。急にそんなことを言われても困る。  だってわたし、「つきあって」なんて言われたの、はじめてだし…… 「あの……わたし……先輩のこと、よく知らなくて……」  奥浦先輩が、ハッとした顔で言う。 「そ、そうだよな! おれのことなんか知るはずないよな?」 「あ、ごめんなさい……」 「いや、いいんだ」  奥浦先輩は苦笑いしながら、また頭をかく。 「だからわたし……なんて言ったらいいのか……」 「じゃあ、とりあえずつきあってみないか? つきあっているうちに、おれのことわかると思うし」 「え……」  視線を上げると、奥浦先輩と目が合った。どうしようもなく、困ってしまう。  とりあえずつきあうなんて……そんなのでいいの?  みんなそんなふうにつきあっているの?  わたしには無理だよ……  黙り込んだわたしを見て、奥浦先輩はまた少し慌てて言った。 「ごめん。ちょっと焦り過ぎたかな」  そして窓際からゆっくりと歩いて、わたしの前で立ち止まる。先輩の胸元のネクタイが目の前に見えて、わたしは恥ずかしくてうつむいてしまう。 「テスト期間が終わるまで、樫村さんの返事を待つよ。家に帰ってゆっくり考えてきて」 「あ……はい」  こくんとうなずいてみたけれど、どうしたらいいのかわからなくて、わたしは頭を抱えたくなった。
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