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「そ、それでっ……もしよかったら、おれとつきあってくれないかな?」
わたしは驚いて顔を上げる。
「あ……え?」
「だめ……かな?」
どうしよう。急にそんなことを言われても困る。
だってわたし、「つきあって」なんて言われたの、はじめてだし……
「あの……わたし……先輩のこと、よく知らなくて……」
奥浦先輩が、ハッとした顔で言う。
「そ、そうだよな! おれのことなんか知るはずないよな?」
「あ、ごめんなさい……」
「いや、いいんだ」
奥浦先輩は苦笑いしながら、また頭をかく。
「だからわたし……なんて言ったらいいのか……」
「じゃあ、とりあえずつきあってみないか? つきあっているうちに、おれのことわかると思うし」
「え……」
視線を上げると、奥浦先輩と目が合った。どうしようもなく、困ってしまう。
とりあえずつきあうなんて……そんなのでいいの?
みんなそんなふうにつきあっているの?
わたしには無理だよ……
黙り込んだわたしを見て、奥浦先輩はまた少し慌てて言った。
「ごめん。ちょっと焦り過ぎたかな」
そして窓際からゆっくりと歩いて、わたしの前で立ち止まる。先輩の胸元のネクタイが目の前に見えて、わたしは恥ずかしくてうつむいてしまう。
「テスト期間が終わるまで、樫村さんの返事を待つよ。家に帰ってゆっくり考えてきて」
「あ……はい」
こくんとうなずいてみたけれど、どうしたらいいのかわからなくて、わたしは頭を抱えたくなった。
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