第11章 会いたい

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 病院の自転車置き場に自転車を止め、桜の木の下を走って面会用の出入口へ向かう。  そのときわたしは「あっ」と声をもらして立ち止まった。  少し先の木の下で、車いすに乗った樹くんが、わたしに向かって小さく手を上げたから。 「樹くんっ……」  わたしは制服のスカートを揺らして、樹くんのそばへ駆け寄る。 「迎えに来ちゃった」  ちょっと照れくさそうな顔で樹くんが言う。 「病院、暇すぎて」  その言葉にわたしがふっと笑うと、樹くんもかすかに頬をゆるめた。  わたしたちの立つ木の下の向こうは、中庭になっていた。何人かの入院患者さんたちが、散歩をしたり、ベンチに座ったりしているのが見える。 「押してあげようか?」 「大丈夫だよ。自分でできる」  樹くんは小さく笑って、自分で車いすを動かす。そしてちょっと自慢げに、わたしに振り返る。 「うまいもんだろ?」 「うん」 「歩く練習もしてるんだ。早く直して学校に戻らないと」 「そうだね」  車いすの樹くんと並んで歩く。少し進むと小さな池が真ん中にある、中庭に着いた。それを囲むように、ぐるりと桜の木が並んでいる。  わたしは立ち止まって、上を見上げた。桜の木を見下ろすように、高い建物が建っている。
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