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「美桜。おれとつきあって」
ずっと聞きたかった、樹くんの声。
「いまはなんにもできないおれだけど、これからは逃げないで頑張るから。美桜が小説を書き上げたように、おれもあきらめないで頑張るから。だから……」
その言葉が終わらないうちに、わたしは後ろからそっと、樹くんを抱きしめた。
「だったら樹くんはまず、リハビリを頑張って」
前を向いたままの樹くんが、息をのむのがわかる。
「そしてまたサッカーができるようになったら、わたし絶対応援に行くから」
わたしはそっと目を閉じて、樹くんに気持ちを伝える。
「わたしも……樹くんのことが好き」
心臓が、ものすごくドキドキした。でも、樹くんの背中はあたたかくて、ずっとこうやってくっついていたいと思ってしまう。
「うん……」
樹くんの手が動いて、そっとわたしの手を包み込む。
「頑張るよ、おれ」
背中から、樹くんの肩にそっと頬を寄せる。すると樹くんが、くくっと声を押し殺すように笑ったのがわかった。
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