第11章 会いたい

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「あの、先輩。もうすぐ受験でしたよね? 頑張ってくださいね」  すると奥浦先輩が莉子の隣からひょこっと顔を出し、キラキラした目でわたしを見る。 「樫村さん……ありがとう。きみは天使か?」  わたしはまた苦笑いするしかない。 「もしあいつと別れることになったら、おれはいつでもOKだからね?」 「もうっ、先輩っ! 別れるとかありえませんから! ねっ、美桜?」  莉子が間に入ってくる。わたしは笑って答える。 「はい、ありえません。ごめんなさい、先輩」  先輩が「くぅー」っと唸り声を上げて、頭を抱えた。そんな先輩をなぐさめるように、莉子が背中をポンポンっと叩いている。  奥浦先輩はもうすぐ受験だ。志望校に合格したら、この町を出てひとり暮らしをするのだと言う。  わたしの一年後はどうなっているのだろう。  わたしも生まれたこの町を、出て行ったりするのだろうか。  樹くんは、どうするのだろう。  また離れ離れになるのは寂しいけれど、いまのわたしたちなら、どんなことでも乗り越えられる気がする。  自転車置き場の前で、先輩と手を振って別れた。  莉子と自転車を押しながら、校門を出る。冷たい風がひゅうっと吹いて、体がふるりと震えた。 「じゃあ、また明日」 「うん、明日」  莉子といつもの場所で別れた。一年後も莉子とは、こうやっていられたらいいなと思う。  ペダルを踏み込み、白い建物の下を通り過ぎる。  冷たい風に吹かれる桜の木は、寒い季節に耐えながら、あたたかい春の日を夢見ているようだった。
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