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わたしたちは手をつないだまま、満開の桜の花を見上げた。
樹くんの隣でわたしは思う。
来年も再来年も、こうやって樹くんと桜の花を見たいな。
学校を卒業しても、大人になっても、おじいちゃんとおばあちゃんになっても……樹くんの隣にいられたら嬉しい。
ちらりと樹くんの横顔を見る。樹くんは黙って桜の木を見上げている。
樹くんはいま、なにを考えているのだろう。
わたしと同じことだったらいいな、なんて思ってしまう。
「美桜……」
すぐ隣から、樹くんの声が耳に聞こえた。
「これからもずっと……仲良くしような?」
わたしはゆっくりと視線をおろし、隣を向く。するとわたしを見つめている樹くんと目が合った。
胸がきゅうっと締め付けられて、そのあとふわっとあったかくなる。
「うん」
わたしは樹くんの隣で笑顔を見せる。樹くんが嬉しそうに笑って、それからもう一度、わたしの手を優しく握りしめた。
柔らかい日差し。穏やかな風。樹くんの手の、あたたかなぬくもり。
わたしたちの上から、桜色の花びらが一枚、美しく舞い落ちてきた。
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