第12章 これからもずっと……

5/5
前へ
/156ページ
次へ
 わたしたちは手をつないだまま、満開の桜の花を見上げた。  樹くんの隣でわたしは思う。  来年も再来年も、こうやって樹くんと桜の花を見たいな。  学校を卒業しても、大人になっても、おじいちゃんとおばあちゃんになっても……樹くんの隣にいられたら嬉しい。  ちらりと樹くんの横顔を見る。樹くんは黙って桜の木を見上げている。  樹くんはいま、なにを考えているのだろう。  わたしと同じことだったらいいな、なんて思ってしまう。 「美桜……」  すぐ隣から、樹くんの声が耳に聞こえた。 「これからもずっと……仲良くしような?」  わたしはゆっくりと視線をおろし、隣を向く。するとわたしを見つめている樹くんと目が合った。  胸がきゅうっと締め付けられて、そのあとふわっとあったかくなる。 「うん」  わたしは樹くんの隣で笑顔を見せる。樹くんが嬉しそうに笑って、それからもう一度、わたしの手を優しく握りしめた。  柔らかい日差し。穏やかな風。樹くんの手の、あたたかなぬくもり。  わたしたちの上から、桜色の花びらが一枚、美しく舞い落ちてきた。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

459人が本棚に入れています
本棚に追加