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「はぁー? OKしなかったの?」
「うん。わたしの返事を待ってくれるって」
教室に戻ると莉子が待っていた。他の生徒はもう下校したようで、そこには莉子しかいなかった。
「なんでよー? 奥浦先輩、カッコよかったでしょ?」
わたしの背中をバンバンと叩きながら、莉子が言う。
「……そうなのかな? よく顔、見れなかったからわかんない」
莉子が大きなため息をつく。
「サッカーも上手いんだよ? 試合の日なんか三年生の女子が、奥浦先輩に渡すお弁当持って応援に来たりするんだから」
「そんなにすごいひとなの?」
「すごいひとだよ! 優しいし、仲間や後輩たちからも頼られてるし、完璧じゃん!」
「でもわたし……あのひとのこと、知らないもの」
「だけど先輩は美桜のこと見てたんでしょ? ずっと美桜のこと気にしてたんだよ? これってすごいことだと思わない? 運命だよ!」
運命……か。
わたしはぼんやりと、尊くんのことを考える。
わたしがあの病院で尊くんと出会えたのも、運命だと思っていた。
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