第1章 桜色の約束

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「朝からごそごそと、なにやってたの?」  朝の光が差し込むダイニングキッチンは、コーヒーと炒め物の香りがした。  お父さんはもう会社に出かけたあとで、出来たてのハムエッグをテーブルに置きながら、エプロン姿のお母さんがわたしに聞いてくる。 「んー、ちょっと今日の授業の予習を……」 「うそだぁ。お姉ちゃんが朝から予習?」  いつもの席に座ったわたしに、隣でパンをかじる妹の陽菜(ひな)が言う。  髪を長く伸ばし中学校のセーラー服を着た、わたしよりみっつ年下の陽菜を、わたしは横目でにらみつける。 「なんで嘘って決めつけるのよ?」 「どうせまた、ラブレター書いてたんでしょ? 大好きな天城(あまぎ)尊くんに」 「陽菜!」  声を上げたわたしに向かって、陽菜がべえっと舌を出す。そんなわたしたちを見たお母さんが、あきれたように声をかける。 「ほら、もういいから。ふたりとも早く食べちゃいなさい。本当に遅刻するよ」 「はーい」  陽菜と揃って返事をしてから、目玉焼きを箸で半分に切る。柔らかい黄身がとろりとあふれて、わたしはそれを白身と一緒に口に入れた。
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