444人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
「朝からごそごそと、なにやってたの?」
朝の光が差し込むダイニングキッチンは、コーヒーと炒め物の香りがした。
お父さんはもう会社に出かけたあとで、出来たてのハムエッグをテーブルに置きながら、エプロン姿のお母さんがわたしに聞いてくる。
「んー、ちょっと今日の授業の予習を……」
「うそだぁ。お姉ちゃんが朝から予習?」
いつもの席に座ったわたしに、隣でパンをかじる妹の陽菜が言う。
髪を長く伸ばし中学校のセーラー服を着た、わたしよりみっつ年下の陽菜を、わたしは横目でにらみつける。
「なんで嘘って決めつけるのよ?」
「どうせまた、ラブレター書いてたんでしょ? 大好きな天城尊くんに」
「陽菜!」
声を上げたわたしに向かって、陽菜がべえっと舌を出す。そんなわたしたちを見たお母さんが、あきれたように声をかける。
「ほら、もういいから。ふたりとも早く食べちゃいなさい。本当に遅刻するよ」
「はーい」
陽菜と揃って返事をしてから、目玉焼きを箸で半分に切る。柔らかい黄身がとろりとあふれて、わたしはそれを白身と一緒に口に入れた。
最初のコメントを投稿しよう!