第1章 桜色の約束

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第1章 桜色の約束

 (たける)くん、お元気ですか? わたしは元気です。  いまわたしは満開の桜を眺めながら、このお手紙を書いています。  わたしの部屋の窓からは、公園に咲く桜がちょうどいい感じに見えるんです。  素敵でしょう? お部屋にいながらお花見ができるんですよ。  尊くんの住んでいる町でも、桜は咲きはじめましたか?  わたしたちが入院していた病院の尊くんの部屋からも、綺麗な桜が見えましたね。  あれからもう六年……わたしは高校二年生になりました。尊くんは三年生ですね。  もうすぐ十八歳になる尊くんに、会ってみたい気もします。  いえ、すごく会いたいです。 「……なんて、ね」  最後の一行は文字にできず、わたしは勉強机の上にお気に入りのペンを置いた。  そして椅子に腰かけたまま、窓の外を見る。狭い道路を挟んだ向かいの公園が、桜色に染まっている。  春――今年も春が来た。尊くんと出会った春だ。 「美桜(みお)ー。時間、大丈夫なのー? 遅刻するよー?」  ドアの向こうからお母さんの声が聞こえ、わたしは慌てて時計を見上げる。 「ヤバい。もうこんな時間!」  桜色の便箋を二回折り、住所を書いておいた封筒に入れる。花びらの形をしたシールで封をして、通学用のリュックの中に丁寧にしまった。 「美桜ー!」 「はーい! いま行くー!」  わたしは大きな声で答えると、リュックを持って立ち上がった。
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