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そこのドアの窓からグランドが見えた。
「いい?」
カナちゃんの目を見て訊く。
早く読みたいのに、読むことを先延ばしにしたいという気持ちが綯交ぜになってる。
カナちゃんが顎を突き出した。
早くしてという合図だ。
ゆっくりと折られた紙片を開いた。
文字を見る。
読むのではなくて見た。
文字があることに感動していたのだ。
カナちゃんの見慣れた丸っこい字の下にある、角ばった力強い字。
ごくんと喉がなった。
『あなたの好きな花を教えてください。
答えを書いて、この机の中に入れてください』
カナちゃんが書いた文。
その文のすぐ下に書かれた文字。
『ニッコウキスゲ』
彼が書いた回答。
彼の文字はたったそれだけ。
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