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フリ魔女子
生花店「コラージュ」に名もない一輪の花が咲き誇った。
「コラージュ」は武器屋や防具屋のように、立派な店舗を構えているわけでもなく、品物が充実しているわけでもなく、店員が足りているわけでもなく、小さなスペースに布を一枚敷いて、その上に植物を並べて売っている所謂「フリーマーケット」というスタイルで経営している店だ。
「今日もお客さんこないね」
フリーマーケット店員のセドリが、今朝も新しい植物を出荷して来た。
単純に植物の出荷が楽しいから続けてられている仕事だ。断崖絶壁をロッククライミングしながら、たった一輪の花を積みにいくこともあれば、巨大な食虫植物と戦うこともあるので、セドリにとっては刺激に満ちた仕事だが、販売した花が売れない店に座っているポインセチアが少し辛そうに見えた。
「お隣さんは、商売が上手だから」
フリーマーケットの隣では武器屋や防具屋がさまざまは方法で商売を盛り上げている。
「やってみた、呪われた装備で付加トレーニングすると、呪いに打ち克つポジティブな肉体と精神が手に入るのか?」や「食べてみたっ! サバイサル生活でモンスターの肉は食べられるのか?」といった実演販売などで大勢の客を集めているようだ。
「武器屋のデメキンさんや、防具屋のミカエルさん、よろず屋のヌコナリさんも商売上手だもんね。それは悔しくもなるよ」
セドリは隣の店の様子を眺めながら、そう呟いた。
「見ていて、すごく面白そうだよね」
「悔しいじゃなくて、面白そうなの? やっぱり変わってるなポインセチアは」
一般的に「悔しい」と答えるような場面だが「面白そう」というポインセチアに、セドリは首を傾げた。隣に負けないくらい、売り上げを伸ばしたいとか、儲けたいとか考えないのだろうか。ポインセチアのことがわからなくなった。
「私もやってみたいと思ってるの、お隣さんみたいなこと」
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