キミの花の言の葉

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「お前ってモテるっけ?」 季節は春、4月の半ば。桜が咲く、暖かくて心地良いひととき。 通勤電車に揺られながら、横の席の()(かい)()いてきた。 ここはそんな都会じゃないから、通勤で慌ただしい朝も満員電車にはならない。がらっとして殺風景な電車の中で、快適に座って過ごせる。 「んー、ギャルとかウザイ奴によく声かけられるよ。昔も今も」 「うわー、羨ましいわ。顔良いと人生勝ち組だよなー」 「全然。むしろ負け組だよ、好きでもない奴にベタベタされて気持ち悪い。俺のまわりヤンキーばっかだったし」 「ヤンキー?へー、お前も元ヤンだったりすんの」 「それはないよ。でもまわりが酷かったんだよね」 たわいのない話をするのは鵜飼と俺だ。 俺は、昔は全く気づかなかったけど、俗に言う世間での「イケメン」らしい。おかげで小さい頃からまわりに女が集まってきたり、陰でなんかコソコソ言われたり、知らない人に声をかけられる事は日常茶飯事だった。 人にはそれぞれモテ期とかがあって、全くない人もいるけど、俺は自分の人生こそがモテ期だった。普通の大学を出て、今は社会人生活3年目の25歳だけど、しょっちゅう逆ナンされたりスカウトされそうになる。 俺は大人数でワイワイすることも目立つ事も好きじゃないから、大迷惑だった。 「ふーん…てことはお前、モテるの嫌なんだ」 「そ。顔交換する?」 「したいのはやまやまだけど無理だろ~」 鵜飼は俺の同期だ。同じ会社に勤めていて、同学年で仲良くなり、今では休日に一緒に遊びに行く仲だ。 学生時代の校区は違ったけど偶然家が近く、通勤電車は大抵一緒。平日は毎日、鵜飼となんか会話しながら通勤している。 鵜飼はフツメンで、かなりのモテたがりだ。性格は悪くないと思うんだけど、彼女のいた事がないらしい。 鵜飼が俺の顔を見て尋ねてくる。 「てことはさ、その様子じゃお前、付き合った事とかないの?」 「ないよ。告白された事はめちゃくちゃあるけど、マトモな奴全然いなくてさ。あいつら顔しか見てないんだよ、絶対裏でなんかヤバイ事考えてる」 「…なんとなく察したよ」 実は俺も人生で付き合った事がない。でも告白された回数は正直、俺の右に出る奴はいないと思う。単純に、良い相手が居なかっただけだ。 …でも。 桜咲き誇るあの日、1度だけ。 真面目な告白をされたんだ。 「なあ花瀬、嫌じゃなかったらさ、お前の学生時代の話聞かせてくれよ」 「ん、いいよ。そういえば俺さ、1回告白された事あるわ。真面目に」 「えっそうなの?じゃあその話聞かせてよ」 「オッケー」 俺は、ぽつりぽつりと昔話をし出した。
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