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「あっ…ごめんなさい」
ぶつかりそうになって慌てて身を引くその女は、この辺りじゃ珍しく制服を気崩さずに着ていた。
髪色は茶色だけど、自然な色だしこれは多分地毛だろう。髪型はツインテール。化粧もしてなくて純粋な感じがして、まあいわゆる美少女に分類されるタイプだろう。
確かこいつ、名前は。
「…佐倉、だっけ。ごめん」
3年間同じクラスなのに特に喋った事もない女の、佐倉 だ。
「う、うんっ。こちらこそ…ごめん」
佐倉は皆と比べてホントに珍しく真面目だ。
グレた事もないし、騒がないし、不良からは嫌われてるけど真面目な奴だ。俺も安心してタメで話せる。
「…なんか、ちょっと不思議な感じ」
佐倉が頬を赤らめて言った。
「?」
「…だって、誰かとぶつかりそうになったら、必ず絡まれるもん。運が良くても舌打ちされるし。なのに謝ってくれる花瀬君って…真面目だよね」
「あ~…」
佐倉から見ると、俺だって真面目か。
ちょっと仲間意識っていうか親近感が湧いて、俺は佐倉に話しかけた。
「そっちは…何の用で教室に?」
「わっ、忘れ物を取りにきたんだ。その、花瀬君…」
佐倉は必死に声を絞り出した。
「一緒に、帰らないっ?」
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