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その11
麻衣
ここらが幕引きだろうな、この辺が限界だろう…
ギリギリの、まさにその瞬間だった
相馬豹一は私の両足の間から刀を抜き取った
やおら、刀を持ち代えると、”うぉーっ”と雄叫び上げて勢いよくソレを投げつけた
刀は私の頭上を越えて、ブーンという音と共に後ろへ飛んでった
振り返らなかったが、私が背にしている2メートルほど離れた柱に突き刺さったようだ
心臓のドックンドックン、さらに激しくなって、少しばかりちびった
眼の前の会長は肩を大きく上げ下げして、呼吸を整えてから私に話しかけた
「フン、たいそうな真似しでかすだけはある。ガキだが大したクソ度胸だ」
そうは言ってくれてるが、私はもう全身汗びっしょりで、頭も混乱してる
「それに、いい眼してるな。…、どうだ、俺と取引するか?」
状況を飲みこめていない私は、まだ言葉が出ない
...
会長は部屋の隅にある金庫を開け、何かを取り出してきた
そして私の前に今度は胡坐をかいて座り、手に持ってる封筒を畳つたいで私の足元へと放った
「中身は錠剤だ。国内じゃまだ流通してないが、最近違法になったクスリだ。そいつを窘める覚悟あるんだったら、今回は水に流してやる。どうだ?」
私はだいたいだが、察しはついた
「それで、息子さんの件は本当に許してくれるんですか?それと、3人も返してくれるんですか?」
「ああ」と首を縦に振って、さらに続けた
「それやって、高校卒業までにそれも卒業する、これが条件だ。できるんなら、こっちはお前の後ろ盾になってやる。金と力、無制限でな。お前、やりたいことあるんだろ?そこらの小娘が考えの及ばないこと、したいんだろう?思いっきり暴れさせてやるよ」
金と力を無制限で?しかし、こんな展開あり得るのか?
どうやらこの人、私のこと見切ってるみたいだ
たぶん、眼をずっと見てて、私の深いところまで読み取っちゃったんだろう
だけど…、いくらなんでも、この人の息子を間接的に殺したようなもんだよ、私…
なのに、リスクある条件と言っても、”それ”、チャラにするだけでなく、支援もしてくれると。なんと無制限で…
なぜ?という気持ちは当然あったが、騙されてるとかは全く思わなかった
不思議だが、全然疑ってなかった
いずれにしても、とんでもない人だ、この親分
ある意味、狂ってる
既にハラを決めてた私も、イカレてるんだろう、たぶん…
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