プロローグ/麻衣の回想

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その12 麻衣 私が”了解”の意思を告げると、相馬会長は”念”を押した 「地獄を往復することになる。本気なんだな?」 「本気です」 しばらく沈黙が続いた間、またも二人は目を見つめあっていた 「よし、取引成立だ。息子のことは忘れる。もちろん、警察沙汰にもしねぇ。その辺はうまくできる。安心しろ」 会長は立ち上がり、「剣崎いるな?入ってこい」と大声を上げた すぐに、さっきのスーツ姿の幹部、剣崎さんが部屋に入ってきた 「話はついた。定男の件は内々で処理だ。それで、今日からコイツは俺の遠縁の娘だ。やりたい放題で支援してやることにした。お前、見てやれ」 剣崎さんは事務的に”話”を聞いて、指示に従っているようだった ... 話が終わると、剣崎さんは私を庭に連れて出た 既に会長の姿はない やがて、久美たち3人が数人のスーツ姿に囲まれ、庭に現れた しかし、それは工場からの時とは明らかに違う あの時は”連行”だが、今はエスコートといった感じだ 「麻衣ー、無事だったのー?わー!」 久美が私を見つけると、涙声で駆け寄ってきた ほかの2人も一緒に走ってくる 3人とも、ジャージ姿に着替えていた 「私たち、助かったの?家に帰れるの?」 「終わったよ、解決だ。もう帰れる」 私が手短に答えると、剣崎さんは周りに指示して車の手配をした 「お嬢さんたちをお送りしろ」 3人は不安そうな顔つきして、まだ怯えてる様子だったので、私は言った 「大丈夫だ。ちゃんと送ってくれるから。ただ、今日のことは絶対内密だぞ、いいな」 「うん、誰にも言わないよ。絶対に!麻衣は?一緒に帰れるんでしょ?」 「私は寄るところあるから。心配いらないから。月曜日に学校で会おう」 3人はスーツの男たちに丁重に”送りの車”へと案内され、本部を後にした 「これから、俺の店で今後の打合せをしよう」 剣崎さんはそう言うと、自分の運転で私と店に向かった ここから始まったんだ、こうして… 私は、昨日までは想像もし得なかった道を”疾走”することになった
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