序章/ある見逃せない前日譚ーヒールズ・リンチ事件の真相ー

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ヒールズリンチ事件の真相/その2 剣崎 相馬豹一という人は、すべての意味で感性の天才だと思うし、信じて疑わない そのひとつの才能が、様々な状況を取り込む鋭い嗅覚だ そしてそれらを活かす発想が、これまた常人のそれをはるかに超えた突飛さを持ちえていて、まあ、俺達組織の中のモンはいつもそれに驚かされているという訳だが…(苦笑) ... 今回、このタイミングで相和会を動かすことを会長が決めた理由というか、ここに至った然るべき要因に結びついた点として、まずもっては、ここ都県境のガキどもを取り囲んでいた状況の変化があるんだろう これはこの俺もある程度は周知していたことなのだが、もともと相和会が仕切るテリトリーのお膝元である都県境は、やんちゃなガキどもがいくつもの小規模グループで乱立させ、それらの多くは在○系だった そしてそのすべてを黒原盛弘というやはり在○の男がこれまでずっと統括していたのだが、去年急逝してその均衡は見事に崩れた その状況をいち早く察知し、さっそく奴らに関与していったのが星流会の諸星だった ... あの人も同じ同胞ってことで、その辺りを上手くコーディネートできたんだろうが、その成果は割とはっきり出たよ やくざの威光に色気も持った一部のガキどもが諸星に尻尾を振って寄っていったんだ 諸星はそいつらを陰でバックアップし、旧来のやくざかぶれのハンパ者とが合体させ、愚連隊的な新たなかたまりを作ったよ しかし、その実体は星流会というれっきとしたやくざの二次組織に近かったと見てる 最近の諸星は、このところ世の中の景気が上向いてきてる傾向を見て取り、将来的にはガキどもを介したシノギを搾取できる新しい市場を作り上げる青写真を描き始めたようで、その辺りを相馬会長は敏感に読み込んでいたかもな
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