序章/ある見逃せない前日譚ーヒールズ・リンチ事件の真相ー

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ヒールズリンチ事件の真相/その7 南部 「砂垣さん、黒原さんがいなくなったからこそ、それを”すべて”の理由に当ててしまったら、みんな自分に都合のいい解釈でその主張をぶつけられますよ。そんなこと許したら、カオスですって。黒原さんに魅了されて、オレ達はこの都県境で熱い思いを共有できたんです。その求心力たる存在を失った…。これはオレ達全員にとって、フェアな事実なんです。それをまずは受け止めて、オレ達が求めていたものをもう一度、見つめ直しましょう。そうすれば、無用な荒らしや憎しみ合いはわずかでも避けられます!」 「南部、それが出来りゃあ、苦労しねえよ。できねーから、その先を作り出さなきゃなんねーんだって。黒原さんという偉大な男をなくしてさ、残されたオレ達は所詮、皆凡人だ。きれいごとは通用しねえ。現実なんだ、それは。誤解だのって、黒原さんの口上なら奴らも耳を傾けるが、俺達となれば、そうはいかんだろーが。だから、それでどうするかなんだよ、要はよう!」 「オレ達墨東会は確かに凡人の群れですよ。あんたが言うとおり。黒原さんと同じ理想述べても、連中の心には届かない。オレ達では…。でもこの都県境には、黒原さんと同じ伝達力を有する人間がもう一人います」 「南部、テメー、まさか、それって…」 「紅丸有紀ですよ。言うまでもないが…」 紅丸さんの名を聞くと砂垣さんは顔面を紅潮させ、オレに喰いかからんばかりだった ... 「おい!女に媚び売ってまでコトを収めるってのか、お前は?」 「別に媚びる訳じゃないですよ。それに女だからって云々はナンセンスです。黒原さんだって、紅丸有紀って人を特別な存在として捉えていたんですから…」 「フン、俺は女なんかとお手手繋いではゴメンだぜ。第一あの女、男を排除して女だけの勢力拡大を目論んでるだろうが!そんなもんに与みできるかってんだ。アホくさ…」 やはりこういう切りだし方だとこの人、取りつく島がないな もっとも、この考えは他のみんなも一緒で、砂垣さんに限ったことではない だが…、このままじゃ、こっちが在○の勢力敵対して、まとまったところを愚連隊系の半グレたちに吸収される それこそパックリだろうよ 奴らは所詮、ヤクザのお抱えだ そうなれば…、やくざと変わんないチンピラ集団と化すのは必定だ ここは例え少数でも、志を共にした精鋭たちと手を携えなきゃ… その核になるのはやはり墨東会しかない まずもっては、墨東を紅組みたいなしっかりした理念を掲げる一騎当千の集団にすることが不可欠だ たとえ少数でも その為には…
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