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ヒールズリンチ事件の真相/その19
南部
8人によるディスカッションは、いわば押しつけ合いだった
砂垣さんは絶対ヤダの一点張りで、積田がじゃんけんで決めようと提案しても絶対ヤダだったわ
そしたら織田ともう一人も絶対ヤダで、3人は積田とオレに視線を集中してるし…
一方、あっちの3人はスンナリだった
「こっちは俺が遣いを買って出た。そっちは誰が出るんだ」
そう言ってのけたのは高本だったよ
で…、こっちは…
再び砂垣さんたち3人が、オレたち二人をじーっとだよ
...
オレは積田と顔を見合わせ、アイコンタクトを交わし、合意した
「積田とオレ、どっちかってことで決めるしかないようですね、砂垣さん」
「ああ、頼むわ」
「なら、あの二人どっちかを指名するのは、遣いに行かないあなたたち5人で決めてもらいますよ」
砂垣さん、今度は他の4人に目配りしてる
「はは…、それもよう、遣う方で決めてくれよ。なあ…、持ってく指なんだしさ」
オレは返ってくる答えを承知で、砂垣さんのリターンを引き出した
「じゃあ、今から3人でヤツらにすべての回答をしてきます。その決定には一切異論ないですね?」
「ああ、それでいい。なあ、みんな‥」
これには全員フンフンと勢いよく頷いていた
決まったな
...
「じゃあ、今からこの3人で相和会に伝えてこよう」
積田と高本は黙って首を縦に振った
そしてその場から数メートル離れたところに移動すると、オレたち3人は肩を寄せ合い、ヒソヒソ話に入った
「あと1分しかないから、オレの提案を言うぜ。遣いはこの3人ってことにする。高本のとこは人数が少ないからバランス見てってことで。そんで指切られる人だが…。どうも暴行受けたのは左側だけみたいだろ?」
「ああ、そうだな。高本もそう見えるか?」
「うん、明らかだ。一人は顔面アザだらけで、相当こっぴどくやられてるよ」
「ならさ、ここは究極の選択から逃れられないんだ。じゃんけんとか、あっち向いてホイとか、クイズとか、そんなおちゃらけたことを押しつけするんなら、3人でどっちかを決めよう。ここは逃げずに、今確認できた現状を踏まえて。どうだ?」
オレは二人の顔を交互に見て、決断を迫った
...
二人の返事はすぐだった
「ああ、オレはそれでいい。確認だが、暴行を受けてない方にってことだな?」
「ああ、一応、これもバランスってことで。まあ、所詮は自己満足にすぎないが…。あんたはどうだ、高本」
「うん、それで異論を唱える気はない。だが、相和会の人には今の二つの根拠をはっきり伝えよう。当事者になるあの二人にも聞こえるように…」
「賛成だ。なあ聖一…」
「うん、そうしよう。はっきりとな。じゃあ、3人で話しにいくか」
この時の、3人揃ってやくざもんの前まで向かった数歩の感触…
おそらくは、一生忘れることなどないだろう
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