プロローグ/麻衣の回想

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その9 麻衣 ハハハッ、そう言われてみれば、なるほどだ あの時、必死で抵抗して暴れてたし、ましてやあの廃工場はうす暗かった 無意識につかんだガラスの破片で、とにかく”目の前”を切り裂いたのは間違いない でも、それが誰の”どこ”だったかまでは整理がついてなかった ガラスの切っ先に達したのは、”相手”の喉元のあたりでないのはなんとなくわかってたけど… 感覚的には胸元、若しくは腹部あたりだと決めつけてた だけど、実際は”モロ”、下半身だった訳ね しかも、あの状況ならズボン下げてるのはむしろ自然だし… いくら弾みだとか成り行きだとか言っても、こりゃ、分が悪すぎだ 猟奇犯だよ、我ながらだけど… 私が傷つけた”相手”は、それ原因で自殺しちゃってるっていうし、すでに… で、その父親は、全国組織がどうしても傘下に置けなかった”伝説”のカリスマヤクザときてる 相馬豹一という、稀代の狂気と伝説の親分は今、まさに目の前にいる 私の目、じっと見つめながら、私の両足の間、つまり股間に刀ぶっさしてるし ハハハッ、終わったわ、もう、私…
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