19. 楽園

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(わたくし)、明堂みちると申します」 『明堂』の名に、心臓が跳ねる。  同時に、二日前から感じ始めた胎動も感じた。  私の動揺がお腹の赤ちゃんに伝わってしまったのだろうか。 「明堂央の妻です」 「央さん……の?」  いつか彼が言っていた、会社も家も捨てて結婚したい女性、だろうか。 「央は会社を離れられないので、代わりに私が参りました」  ドクン、と心臓が鈍い音をたてて軋む。  思わず、両手でお腹を抱く。 「悠久に……なに……か?」  みちるさんがひゅっと短く息を吸い、飲み込む。  今度はさっきより少しゆっくりと息を吸う。 「悠久さんは今、千歳の病院にいます」 「え――?」  みちるさんが眉をひそめる。  視線を落とした仕草に、よくない状況なのが確信できた。 「楽さんを……待っています」 「どうして! ――病院に……。ここに来るって……約束したのに――!」 「ここに来る途中で……。飛行機の中で意識を失って、千歳の病院に運ばれたんです。急性硬膜下血腫でした。手術の必要はなかったんですけど、三日経っても意識が戻らなくて……。医師が言うには――――」  激しい目眩に襲われて、私はガクンと膝から崩れた。  咄嗟に昌幸さんに抱えられた私の耳には、みちるさんの声は届いて来なかった。
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