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「私、明堂みちると申します」
『明堂』の名に、心臓が跳ねる。
同時に、二日前から感じ始めた胎動も感じた。
私の動揺がお腹の赤ちゃんに伝わってしまったのだろうか。
「明堂央の妻です」
「央さん……の?」
いつか彼が言っていた、会社も家も捨てて結婚したい女性、だろうか。
「央は会社を離れられないので、代わりに私が参りました」
ドクン、と心臓が鈍い音をたてて軋む。
思わず、両手でお腹を抱く。
「悠久に……なに……か?」
みちるさんがひゅっと短く息を吸い、飲み込む。
今度はさっきより少しゆっくりと息を吸う。
「悠久さんは今、千歳の病院にいます」
「え――?」
みちるさんが眉をひそめる。
視線を落とした仕草に、よくない状況なのが確信できた。
「楽さんを……待っています」
「どうして! ――病院に……。ここに来るって……約束したのに――!」
「ここに来る途中で……。飛行機の中で意識を失って、千歳の病院に運ばれたんです。急性硬膜下血腫でした。手術の必要はなかったんですけど、三日経っても意識が戻らなくて……。医師が言うには――――」
激しい目眩に襲われて、私はガクンと膝から崩れた。
咄嗟に昌幸さんに抱えられた私の耳には、みちるさんの声は届いて来なかった。
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