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「――でね、央さんとみちるさんが赤ちゃんを一人ずつ抱っこして、私が写真を撮ったんだけどね?」
私はスマホにその写真を表示して、悠久に向けた。
央さんとみちるさんが赤ちゃんを抱いて肩を寄せている写真。
「央さん、泣いちゃって……」と言って画面をスクロールする。
「そしたら赤ちゃんも泣いちゃって」
もう一度スクロールする。
「みちるさんの抱いてた赤ちゃんも泣きだしちゃって。病室が大騒ぎになっちゃったの」
ふふっと笑って、スマホをベッド脇の棚に置く。
「今は、二人で赤ちゃんの名前を考えてるよ」
明堂家での騒動から二か月ちょっと。
ゆっくりと子供の名前を考えられる状況ではなかったし、いくつかの候補はあったから生まれて顔を見て決めようと思っていたらしい。
それが、顔を見た瞬間に、央さんもみちるさんも候補の名前は違うと思ったという。
陣痛が始まって、おじいさんも出産して大丈夫と判断し、私はみちるさんに言われていた番号に電話してそれを伝えたけれど、さすがに出産には間に合わず。
央さんが我が子と対面したのは、生まれた翌日だった。
無理をして駆け付けた央さんに許された滞在は三日で、明日の朝の便で東京に戻るから、何としても今日中に名前を決めて出生届を提出したいのだ。
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