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「どんな名前になるのかなぁ……」
背中を丸めて、眠る悠久の肩におでこをのせる。
「悠久はどんな名前がいい?」
悠久の胸に手を当て、鼓動を掌に感じ、目を閉じる。
「名前、一緒に考えようよ……」
それより、子供ができたことを話さなきゃ……。
医師の話では、萌花に負わされた傷は治っているから、目覚めない直接の原因ではないらしい。
だから、今すぐに目覚めるかもしれないし、一週間後に目覚めるかもしれないし、一か月後に目覚めるかもしれない。
ただ、どうやら耳は聞こえているらしい。
長く昏睡状態にあっても、目覚めた時に、眠っていた時の周囲の会話を覚えていた人もいるという。
それを聞いて、私は毎日、面会時間中はこうして悠久のそばにいて、話しかけている。
「事故に遭ってから相当なストレスを抱えていたのかもしれないね」
私の話を聞いたおじいさんは、そう言った。
「彼には、こうして何も考えずにゆっくり眠る時間が必要なんだよ」
ゆっくり眠ったら、目を覚ましてくれる?
その問いは、怖くて口に出来なかった。
双子の名前は、『ひかり』と『あかり』になった。
一卵性なので瓜二つなのは当然だけれど、ありがたいことにひかりちゃんはあかりちゃんに比べて髪の毛が長く、見分けられた。
「――それから、ひかりちゃんはあまり大泣きしない子なんだって。いつも先に泣き出すのはあかりちゃんで、ひかりちゃんはつられて泣くんだって。まだ生まれて三日なのに、もうそんなことがわかっちゃうなんて、母親ってすごいね」
いつものように悠久の胸に手を当てて話しかける。
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