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「私は大丈夫かな……」
眠る悠久が不安にならないような話をしなければと思うのに、つい本音が漏れてしまう。ついでに涙まで。
私の不安を察したのか、お腹がポコンと蹴られる。
「ごめんね、大丈夫だよ」と言いながら、片手でお腹を撫でる。
悠久の胸に置いた掌に強い振動を感じてハッとした。
「悠久も慰めてくれるの?」
聞こえているとはいえ、それに反応して鼓動に強弱や速度の変化などあるはずはないかもしれないが、気のせいでも悠久が私の声に応えてくれていると思うだけで嬉しい。
「キス……してい?」
強く早い鼓動は、悠久のものか私のものか。
呼吸が安定している悠久は、点滴やモニターには繋がれているけれど、酸素マスクはしていない。
感触があるかわからなくて、言葉にした。
それから、そっと彼に口づける。
唇は温かくて、乾いていた。
舌先で彼の唇に沿う。
唇を離して目を開ける。
悠久の目は閉じられたまま。
無意識に溢れた涙が垂直に落ちて、彼の頬を濡らした。
「ねぇ、悠久。意識下に私はいる?」
もう一度口づけようと目を閉じた時、コンコンとドアがノックされた。
ハッとして体を起こし、振り返る。
私が「はい、どうぞ」と言うと、ドアがゆっくりとスライドされた。
「修平さん……」
「やあ、楽」
修平さんだった。
手には果物の籠。
「どうして……」
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