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修平さんとは、浩一くんも一緒に味噌ラーメンを食べに行って以来、会っていなかった。
おじいさんの診察を受けて妊娠が確かなものとなった後、私は修平さんに妊娠を告げ、「浩一くんが期待したり誤解したりしないように距離を置きたい」を言った。
私と修平さんは元夫婦で、互いに残る情から連絡を取り合っているだけにしても、浩一くんにそれを理解はできないだろう。
私自身、自分のことで精一杯になるのも目に見えていた。
ただ、悠久が空港で倒れた時、スマホの通話履歴から修平さんにも連絡が入り、安否を気遣う電話が一度だけあった。
私がショックで寝込んでいる間のことで、みちるさんが命に別条はないと言ってくれたと聞いた。
「元気かい?」
修平さんはこれまでと変わらない、穏やかの微笑みで聞いた。
「はい」と、私は答えた。
「彼は眠ったまま?」
修平さんの視線が私の背後に向けられる。
私は身体を捻って悠久を見た。
「央さんに容態を聞いてね」
「そうだったんですね。わざわざありがとうございます。あ、椅子を――」
「――ああ、いいんだ。すぐにお暇するよ」
そう言って、修平さんは果物の籠を私に差し出す。
「ありがとうございます。でも、悠久は――」
「――これはきみに。重いから、後できみの部屋まで持って行くよ」
「え?」
部屋、とはアパートのことだろうか。
「話があるんだ」
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