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央さんは東京に戻り、みちるさんは札幌に残ることになった。
私を心配してのことならばと遠慮したけれど、札幌の町が気に入ったからだと言われた。
央さんの手配で、みちるさんは私のアパートから百メートルほど離れた場所に建つマンションで暮らすことになった。
一緒に暮らすことを提案されたけれど、それは断った。
とはいえ、結果としては一緒に暮らしているも同然の生活になっている。
「健診が終わったら悠久くんの病室に行くわね」
みちるさんと双子ちゃんに手を振り、見送る。
今日はみちるさんと双子ちゃんの一か月健診。とはいっても、みちるさんと双子ちゃんが退院したのはつい二週間前だけれど。
予定日よりひと月近く早く生まれた双子ちゃんは小さくて、常時保育器に入っていなければならないほどではなかったけれど、二週間の入院が必要だった。
それでも、早く退院できた方だとおじいちゃんは言っていた。
みちるさん一人で双子の面倒を見なければならない状況を心配した央さんから相談を受けたおじいちゃんは、知り合いの助産師さんをベビーシッターとして紹介してくれた。
今日も、彼女が健診に付き添っている。
私の体調も気遣ってくれるし、心強い。
私は、既に通いなれた病室を目指す。
「悠久」
病室に入ると、カーテンがなびいていた。
看護師さんが開けてくれたのだろう。今日は風が心地良い。
いつものように、眠る彼の胸に手を当て、鼓動を確かめる。
それから、そっとキスを落とす。
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