19. 楽園

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「俺と結婚してください」  大好きで心地良い声が、少し震えていた。 「間宮楽になって欲しい」  嬉しくて溢れる涙が、淡いピンクの花びらを少しだけ色濃くする。 「はい」  私は声を振り絞った。 「間宮楽になりたい」  答えなんてわかりきっていたはずなのに、悠久がホッとしたように肩を落とす。  私もまた、初めてのプロポーズでもないのに緊張し、嬉しくて、涙が止まらない。  静まり返った店内に、パチパチパチと拍手が響く。 「おめでとう、楽さん」 「おめでとう!」  昌幸さんと昌臣くん、おじいさんが笑って拍手をくれる。  悠久は花束をテーブルに置くと、ジャケットのポケットから紺色の箱を取り出した。  そして、蓋を押し開ける。  二つ並んだ指輪はとてもシンプルで、石などはない。緩くV字にカーブしているだけ。  小さい方を親指と人差し指でつまんで持ち、反対の手で私の左手を持つ。  そして、左手の薬指に指輪を通す。  ちょうど一年前も、こうして指輪をはめてくれた。  あの時は、この一年でこんなに様々のことが起こるとは思っていなかった。  ただ、一緒にいたいと願っていた。  妊娠中で浮腫んでいるから出産後にしようと言ったけれど、悠久はどうしても今日、指輪を贈りたいと言って譲らなかった。  指輪がはまった薬指に口づけられ、今更ながら恥ずかしくなる。  次に私が悠久に指輪を通す。  お揃いの指輪が、くすぐったい。  同じことを思ったのか、悠久の口元も緩んでいた。
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