エピローグ

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エピローグ

「パパとママ、素敵だねぇ」  楽の声に、ピンクのレースのスカートからおむつを覗かせながら、ひかりとあかりが笑う。  俺の膝の上では、タキシード風のロンパースを着た楽久が、飾りの蝶ネクタイを咥えている。  ママが自分じゃない子供を抱いているのが気になるようで、身を捩ってママの元に行こうとするが、俺はがっちり腰をホールドして阻止している。 「楽久、結婚式は女が主役だ。俺たち男は大人しくしてるんだ」  言い聞かせるように息子の耳元に囁く。  楽久は「うーっ」と不満気に声を上げ、恨めしそうに楽を見ている。  本日の主役である央兄さんとみちるさんは、純白のウエディングドレスとグレージュのフロックコートに身を包み、神父の前で見つめ合っている。  兄さんの手でヴェールから顔を覗かせたみちるさんは、横目で双子を見てから、新郎を見つめた。  兄さんは、見ているこっちが目を覆いたくなるほど甘ったるくだらしのない表情で新婦を見つめ、唇を重ねた。  四十間近の年齢と、双子がまだ八カ月ということもあり、みちるさんは結婚式はしなくていいと言ったらしい。それを、兄さんが説得した。  長年待たせた罪滅ぼしと、四十歳を過ぎてしまったら今以上にみちるさんが嫌がると思って急いだようだ。  結局、札幌のチャペルで、簡単な式を挙げることでみちるさんが折れた。  参列者は、俺と楽、楽がおじいさんと呼ぶ(セント)レディースクリニックの(ひじり)会長、孫の昌幸さんと昌臣くん、双子のベビーシッターの松尾さん。それに、双子と楽久。
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