3709人が本棚に入れています
本棚に追加
親父にも招待状は渡したらしいが、現れなかった。
みちるさんのことを散々、犯罪者の身内と罵ったのだ。今更、どの面下げて、と思うのも無理はない。
ただ、弁護士を通じて双子名義の預金通帳を渡されたらしい。
双子が大学を卒業するまでの学費に十分な額だった。
俺は親父に、楽久の誕生を知らせてはいない。
なぜなら、楽久は間宮楽久だから。
明堂家の孫ではない。
親父に告げない理由に、楽は何か言いたそうにしていたけれど、言わなかった。
誓いのキスの後、写真撮影をするためにステンドグラスをバックにして全員が並ぶ。
椅子に座る両親のもとに、楽と松尾さんで双子を連れて行く。
俺は楽久を抱き、兄さんの隣に座った。
その途端、「わーんっ!」と双子が同時に泣き出した。
見ると、双子は両親に抱かれるのを嫌がって、手足をバタつかせている。
可愛いドレスも台無しに、顔は涙と涎でベトベト、おむつ丸出し状態。
「ひかりちゃん、どうしたの?」
俺にはいまいち区別がつかないが、楽が抱いているのがひかりらしい。
「いつもと雰囲気が違うからかしらね」と松尾さんが言った。
ふと足の上でもぞもぞと楽久が動き、見ると双子の声につられて目に涙を溜めている。
これはマズい。
俺は楽久の脇に手を差し込んで抱き上げ、視線を合わせた。
「泣くな、楽久。お前まで泣いたら、ママが困るだろ」
意味なんてわかるはずはない。
が、男同士のアイコンタクトとでもいうか、とにかく楽久は何かを察して蝶ネクタイを咥えた。
よし! と大きく頷き、息子を膝の上に抱き直す。
最初のコメントを投稿しよう!