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「ひかり、あかり」
みちるさんが双子を呼ぶ。と、双子がピタッと泣き止んだ。
「おいで?」
手を伸ばすと、双子が同時に身を乗り出す。
「声でママだってわかったみたいね」
みちるさんの膝に並んだ双子の顔をタオルで拭いて、ドレスを直し、楽が俺の隣に座る。
「すげーな」と、小声で言った。
「ふふっ」と楽が笑う。
兄さんには悪いが、俺にはウエディングドレスのみちるさんより薄いピンクのワンピースを着た楽の方が、よほど可愛く見えた。
髪も結い上げて、毛先をカールさせている。
「楽久、お写真の時だけ我慢して?」
楽はそう言って、息子の口から涎まみれの蝶ネクタイを抜く。
気持ち程度タオルで拭いて、蝶ネクタイを正しい位置に戻す。
「まー」
楽久は楽を求めて手を伸ばす。
「おいで」
息子は俺を見向きもせずに母親を選ぶ。
自分で言うのもなんだが、割と積極的に子育てをしている。授乳以外の、おむつ替えも着替えも、お風呂も寝かしつけもマスターした。
俺は今、札幌の自宅にいながら兄さんの手伝いをしている。主に、広報活動。
株価暴落の後、一部の事業を縮小し、広報部はその対象となった。
その為、元広報部長の俺が外注扱いで広報活動を担っている。
ホームページの更新、CMやキャンペーンの企画なんか。
だから、仕事中でも楽久が泣けばあやすし、買い物にも行く。
俺が出来ないのは授乳だけと言える、はず。
それなのに、楽久の一番は楽から揺らがない。
「裏切者」
大人気なく、妻の膝の上に抱かれる我が子に呟く。
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