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うなじに指を這わせると、彼女が僅かに背を仰け反らせ、首を竦める。
「悠久って……、髪フェチなの?」
「え?」
思いがけない問いに、彼女を抱く腕を緩める。すると、楽は体の向きを変えて俺を見た。
「昔も、髪を解きたいって言ったよね?」
「憶えてた?」
「うん」
「フェチ……とは違うかな。楽はいつもきちんと髪を結んでたから、解いた姿を見たいって思った。きっと他の誰も見たことのない、姿だろう?」
楽久が目を覚まさないようにと、彼女の耳元に唇を寄せ、小声で言う。
「俺が解いた髪がベッドの上で乱れるのが見たい」
「……っ! 高校生がそんなこと――っ!?」
慌ててキスで唇を塞ぐ。
性急に舌をねじ込み、彼女のそれを絡めとる。
そうしながら、彼女の後頭部に腕を回し、手探りでピンを抜いていく。
「ダメって言っても解くけど」
キスの合間にそう言うと、楽がくすっと笑った。
「いつか、って言ったの、十五年も経っちゃったね」
そこまで憶えていてくれたことに、少し驚いた。
「楽久が起きないうちに、リビングに連れてって」
楽が甘く囁く。
俺は彼女を抱き上げ、頬にキスをした。
「十五年前も今も、愛してるよ」
「うーーー……」
楽久の呻きに、思わず顔を見合わせて息を止める。
楽久は眠ったまま。
俺たちは笑い合って、静かに部屋を出た。
----- END -----
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