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番外編*クラス会
*** 知らせ ***
「岩越と藤井が結婚するんだって」
俺は数秒前に届いたメッセージの内容を口にした。
キッチンに立っていた楽が、キョトンと俺を見ている。
「憶えてない? 俺たちと同じクラスだった二人」
「岩越……くん?」
「そ。野球部の部長やってた、デカくて暑苦しい奴」
考え込んでいた楽が、顔を上げた。思い出したようだ。
「藤井は――」と言いかけて、ハッとした。
話題に出す前に気づくべきだった。
「――憶えてるよ、藤井さん」
「え?」
楽がコーヒーのカップを二つ持ち、そばに来る。
カップをテーブルに置いて、俺の隣に座った。
ゆっくりとソファが沈む。
「悠久を好きだった人でしょ?」
「……」
なんとなく気まずくて、カップに手を伸ばす。
ため息を誤魔化すように、コーヒーに息を吹きかけた。何度も。
藤井は、学級委員で俺と親しくなった楽を妬み、何かと嫌がらせしていた。
それを知ったのは、楽と離れた後だったが。
ムカつき過ぎて、告白してきた藤井をこっ酷く振ったんだよな……。
「悠久?」
「……ん?」
若かりし頃の苦いとういか痛い記憶から現実に戻る。
楽は首を傾げていた。
「そんなに熱かった?」
「え?」
「コーヒー」
言われてようやくカップに口をつけた。どれだけ息を吹きかけていたのか、少しぬるくなっていた。
「藤井さんに告白されたこと、ある?」
「……いや」と必要のない嘘を言った後、「……うん」と言い直す。
「付き合ったの?」
「それはない」と、今度は強く否定する。
「可愛いって人気があったのに?」
「楽、あの頃、俺のことで藤井に嫌がらせされてたろ」
「嫌がらせって……いうか」と、楽が口ごもる。
俺はカップを置いて、妻の顔を覗き込んだ。
「あの頃、気づいてやれなくてごめんな?」
楽は横目で俺を見て、ふっと笑った。
「十五年も前のこと、忘れたよ」
楽の、こういうところが好きだ。
いつも、俺の気持ちを軽くしてくれる。
おまけに、可愛い。
もともと、柔らかくて優しい微笑みが可愛くて堪らなかったが、楽久を産んで磨きがかかった。
尊い、とでもいうのか。
とにかく、可愛くて可愛くて可愛くて。
萌花に殴られて頭のネジが二、三本吹っ飛んだんじゃないかって思うくらい、楽が好き過ぎて、常にフルスロットルで愛でたい。
ソファの背に押し付けるように身体を寄せて、唇を重ねる。
下唇を食み、舐め、俺の合図に応えて開いた唇に舌を差し込む。
彼女の両手が俺の脇腹でシャツを握る。
いつまで経っても、遠慮がちな反応が下半身にクる。
真昼間であるにも関わらず、舌を絡ませ、服の上から彼女の胸を揉み上げる。
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