プロローグ

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プロローグ

 お父さんが作るお菓子は、いつもキラキラと輝いて見えた。  いちごが指定席に座っているショートケーキ。  イエロードレスを着飾ったモンブランケーキ。  カメオみたいな一口チョコレート。  ほのかにハチミツ香る秘密のクッキー。  どれもがショーケースの中でほこらしげに光っているのを、小さい頃からずっと見ていた。  お菓子はすてき。すてきはお菓子。  食べるだけでしあわせになっちゃう、魔法の食べ物。  そんなお菓子を作りたいと、小さい頃から思っていた。  お父さんのお店を継いで、きっとすてきなパティシエに。  でも──いつからか。  その夢をあきらめている自分がいた。  どうせ私には、あんなキラキラとしたお菓子は作れないんだ、無理だって……そう思って夢を手放したのは──いつだったんだろう。   fc208e13-060f-4741-b449-4b878572bc47
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