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エピローグ
「……いい天気」
一歩外に出ると、そこは日曜の朝、まだ観光客もまばらな中華街の朝だった。
眩しい朝日を、手をかざして見上げて眞里絵は呟く。
「……何だか、全て夢だったみたい」
「後ろ、見てみろ」
「え?」
夫に言われて今出てきたばかりのビルを振り返ると、何の看板ひとつもない、灰色の薄汚れたコンクリートに暗い窓、そして入口には何も書かれていない擦りガラスを嵌めたドアがあるのみだった。
「……来た時には、ホテル万華鏡って……」
「だから、そういう場所なんだ。ここは。俺たちはもう行く用がないということだろう」
眞里絵は、入り口の前で足を止めて、それを見つめる。
「……よしのちゃんは、……帰って……来るよね?」
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