2/3

35人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「頑張って来た、って……知ってたの?」  膝に手を握り締めてよしのが言うと、彼は眉をひそめた。 「ごめんね。……全部知ってるよ。いつもお花やいろいろ供えて墓参りしてくれてたのも。僕のことを思い出してくれてたのも。僕が諦めたんだから、自分ももう前に進まなきゃいけない、って思って頑張ってくれてたんでしょ」  ずっと堪えていた涙が溢れた。ぼろぼろと頬を伝う涙を見て、彼は悲しげに顔を歪める。 「ごめんね。拭ってあげたいけど、それはもう、出来ないんだ」 「……どうして?そこに居るのに、触れちゃいけないの?」 「ここに、このホテルの中に居れば、姿が見えるというだけ」  バッグからハンカチを出して、よしのは顔を押える。 「……あたしがこうなると思ったから、直接会わずに、……海棠さんになにを伝えさせようとしたの?」 「奴は、辛かったんだ。萩原が事あるごとに、自分には直が居るから、と心の中で思うのが」 「……どういうこと?」  先刻、堤が淹れて来たロイヤルミルクティーが二人の間で湯気を立てていた。一口飲んで海棠は話を続ける。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加