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コンコン、とノックの音がした。
「露木様、失礼いたします。お茶をお持ちいたしました」
「どうぞ」
「お話中、失礼いたします」
堤はテーブルに二人分のロイヤルミルクティーを置いた。
「お好きだと伺いましたので」
「誰に?」
不思議そうに直がたずねると堤は笑顔で答える。
「海棠様が」
「……それ、あたしが言ったの。ずいぶん前に。……」
よしのの眼からまた涙がこぼれた。
「……そう……」
「では、わたくしはこれで」
「あ、ちょっと待って!堤さん」
「はい?」
直は堤を呼び止め、言った。
「……ここは……ホテル万華鏡は、『ふたりで来て、ひとりで帰る』ホテルだって聞きました。……どうしたら、みんなそうやって納得して……永遠の別れを受け容れられるんですか?」
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