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 堤は首を傾げ、考える。 「さて。わたくしが特になにかをした覚えはございませんが」 「……僕は、もう一度この人に会っちゃいけないと思ってたんです。だから、海棠さんから伝えてもらおうと思った。……でも、こうなったってことは、やっぱり会わなきゃいけなかったのかな」  押し黙る二人に向かって、堤は言った。 「もしも、お二人がずっと一緒に居たいと仰るなら、ここでならそれが可能です。来る日も来る日も、お二人ずっと水入らずで、誰にも邪魔されずにお過ごし頂けますよ。……もしも、お望みなら」 「僕は望まな……」  言いかけ、よしのの表情を見て、直は言葉を切った。 「――――生きてる間に別れて、死んで一度別れて、もう一度、今度は本当に、……他の男に心から向き合えるようにするために別れようとしているんだ。露木直は」 「でも……」  夫の言葉に、自分のことのように眞里絵は顔を歪める。
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