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「……生気を失ったりせずに、一緒に過ごせるってことですか?」 「奥様の仰る通りでございます。萩原様に、いえ、当ホテルに滞在中のお客様に身の危険や不都合が起こることは、わたくしの責任において一切有り得ません。この先、あのお二人が顔を合わせることは二度とないでしょう。そのための別れの時間をなににも邪魔されずお過ごし頂く、それがわたくしとホテル万華鏡の務めでございます」  ややあって、海棠が口を開いた。 「ここ、生きてる人間『だけ』でも泊まれるのか?」 「海棠様ご夫妻でしたら特別に。新婚旅行プランなども」 「普通でいい。……あんたがそう言うなら、なにも問題は起こらないと思うが、そこの心配症が気になるだろうから泊まってく。一部屋頼む」 「かしこまりました」 「……さて、と」  ロビーのカウンターに戻った堤は、宿泊台帳にボールペンを走らせ一息つく。
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