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「あの、こちらにお泊まりなんですか?」  たずねると、ええ、と女性は頷く。 「主人と。あなたは?」 「……あたしも、……主人とです」  そう、と女性は眼を細め眞里絵を見つめた。  どうしてだろう。自分より歳若く見える割に、その眼には深い慈愛すら感じられる。それにこの花模様はどこかで――――。  考えていた時ドアが開く音がして、廊下に出て来た夫はこちらに気付くと眉を寄せた。 「眞里絵?……そいつは……」  ちらりと振り返り海棠を認めた女性は、もう一度眞里絵に微笑みかけた。淡く紅を差した唇が動いて、聞こえた言葉にはっと眞里絵が動きを止めた時、女性は両手を広げ、抱きしめるように眞里絵の体に重なりそのまま消えた。  自分たちの他誰も居なくなった廊下に夫の靴音が響く。歩み寄った彼は呆然としている眞里絵を見つめて、言った。 「……お母さん、だな?」
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