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答えようにも言葉が出ず、やがて代わりのように涙が溢れた。途切れ途切れに、どうして分かったのかと問うと夫は笑った。
「最初はどこの幽霊かと思ったが、顔見たらすぐに分かった。……ずっと傍に居たんだろう。それを……感謝しろとかじゃなく、ただ分かって欲しかったんだな。お前に」
「……全然……気付かなかったの。『眞里絵』って呼ばれるまで」
そうか、と夫が優しく抱き寄せた。涙で濡れた顔がシャツに押し付けられるとまたじわりと溢れ出す。
「あのワンピース。……写真で母が着てたの。気に入ってたって、父が」
「……そうか」
さっき、夫が言っていたことの意味がやっと飲み込めた気がした。消えたら終わり、ではないのだ――――。
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